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エッセイスト菊池木乃実のブログです。環境活動家の夫、ポール・コールマンと共に南米チリのパタゴニア地方に在住。ホリスティックで持続可能なライフスタイル実践中


by lifewithmc
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静かな一日

10月16日(月)曇り

朝から洗濯。シャツ2枚、Tシャツ2枚、靴下、ズボンなどを手洗いし、ポーチに干す。そのあと、パスタを作って食べる。鰯のトマト煮の缶詰、ニンニク、タマネギ、ピーマンを炒めてソースを作り、スパゲティをからめて出来上がり。
「トマトピューレがあったら、もっとソースにこくが出てよかったね」とは、元シェフのコメント。今度、エトラのスーパーに行ったときにトマトピューレを探してみることにした。

午後、二階の掃除。ブラシで掃いて、モップがけ。60畳もあるので、なかなかのエクササイズ。そのあと、一階の蜘蛛の巣を払い、ポールが台所と一階を全部、モップがけした。

夕方からは、ゆっくり本を読んだ。「Nature Your Spirits (精神を養う)」というタイトルのタオイズム(道教)の師匠、NI, HUA-CHING氏が書いた本。道教の師匠も、「ヨガの哲学」の中に書いてあったことと同じようなことを言っているのが、おもしろい。
# by lifewithmc | 2007-03-03 07:24 | メキシコ・山の暮らし

誰かが木を切っている

10月14日(土)晴れ
朝、台所の窓の外を、少年と犬が歩いていくのをポールが見かけた。
「腰にマシェッタ(鎌)を持ってた。まさか、後ろの花畑を刈り取りに行くんじゃないだろうね」
花泥棒か?急いで、裏の花畑へ行ってみると、そこには誰もいなかった。

「二階をオフィスにしよう。二階の窓からなら、少なくとも前の花畑は見えるから、誰かが来たらすぐにわかる」
ポールの提案で、二階のレイアウトを変えた。机を南の窓際に移動し、前の花畑が見えるようにする。そこに、彼のパソコンを設置し、私のパソコンは西側の窓、テラス側に机を置いてそこに設置した。

ケサディアとフライドビーンズでお昼を済ませ、テラスでお茶を飲んでいると、今度は、どこかから、斧で木を切る音が聞こえてきた。
「ん?誰か、木を切ってるぞ」音は庭の東側のほうから聞こえてくる。カーン、カーン、カーン。かなり近い。耳を済ませていると、どうやら、その音は、敷地の中にある山の中腹から聞こえてくるのだった。
「うち?」
「うん、山の方だね」
はぁ~。ポールがため息をつき、ティーカップを置いて外へ出て行った。私も後をついていく。音を頼りに、山を登る。かなり上のほうから聞こえてくる。すると、まもなく、音がやんだ。
「気がついたのかな?」
少しずつ上へ登っていくと、いきなり茂みから人が現れた。
「ブエノスタルデス!」帽子をかぶり、日に焼けた老人が挨拶をして、そそくさと降りていく。手には大きなマシェッタ(三日月形の鎌)を下げており、切り倒したばかりの幹を2本肩にかついで持っていくところだった。
「あの人だよね」とポール。
「多分ね」
「グロリア、この山の頂上まで、全部、彼女の敷地だって言ってたよね」
「うん、たしかそうだと思うけど」
「今度、彼女に確かめておこう。もし、そうなら、次にこんなことがあったときには、ちゃんと言わないといけないから」
老人は、山を下り、花畑を横切って、敷地の外へ出て行った。
「あの人、今朝、台所の外の道を通っていったよ。そのとき、台所の窓に僕が立っているのに気がついて、ものすごく驚いた様子だった」
「グロリアさんがいない間、きっと木を切りに来ていたんだろうね」
「多分ね」

家に戻って、あらためて熱い紅茶を入れ、テラスへ出た。
すると、今度は小川の向こうの山から木を切る音が聞こえた。
「こんな風にみんなが木を切り続けたら、あっという間に木がなくなって、この小川の水も干上がってしまう。この水は村の人にとって大切な水源のはずなんだ。だから、水を守るために森を守らなくちゃいけない。木を切ってもいいけど、木が育つには何年もかかるんだから、切るよりも、もっと多く植えなくちゃいけないんだよ。長い目で見たら、人間にとってもそのほうがずっといいんだ。それが、持続可能な発展ってことなんだよ」
16年間、「木を植えよう」と言い続け、実際に木を植えながら、歩く旅を続けてきた彼にとっては、目の前で木が切られるのは、自分のことのように辛いのだ。

すると、どこからともなく、「ズズズズ」という蜂の羽音のような音がした。音のほうを見ると、そこには、青と緑の美しいハチドリが飛んでいたのだった。ハチドリは目に見えないほど速く羽をはばたかせ、まるで空中に立っているかのように浮きながら、私たちをじっと見ている。何度か、遠ざかっては近づき、また遠ざかっては近づいて、とうとう、2メートルぐらい近くまでやってきた。よく見ると、口ばしがストローのように長く、赤く、オナカから尻尾までは真っ白だった。
「ハチドリだ!生まれて初めて見た!」
世にも可愛らしい生き物を目の前にし、純粋な歓びが身体の底からふつふつと湧き上がってきた。羽を必死に羽ばたかせながら、空中に立っているような様子が珍しく、まるで二本足で立っているように見えるのだった。
ハチドリは、しばらく私たちの周りを羽ばたいて、どこかへ飛び去っていった。まるで、がっかりしている私たちを慰めてくれたかのようだった。

誰かが木を切っている_d0107620_6413688.jpg

# by lifewithmc | 2007-03-03 06:37 | メキシコ・山の暮らし

雨が降るように祈ろう

10月13日(金)晴れ

朝、ビーツのスープと全粒粉のパン。ビーツは、ポールの大好きな野菜。日本では手に入らない。一度、沖縄で缶詰のビーツを買ったら、砂糖で甘く味付けしてあったので、がっかりしていた。ツツラのベジタリアンレストランで、「デトックスジュース」(解毒作用のあるジュース)を飲んだとき、ビーツ、セロリ、パセリ、ニンジンなどが入っていた。ビーツは身体の中の毒を外へ出してくれるらしい。

ところで昨夜は、うっかりリビングルームでサソリを踏んでしまった。堅いものを踏んだ気がして足を上げたら、サソリだったのだ!靴を履いていず、靴下だけだったので、刺されなかったのは幸いだった。ポールに外へ出してもらったのだけれど、「どうやら、ちょうど背骨を踏んだらしいよ。普通、サソリは攻撃されたら、尻尾を上げて刺そうとするんだけど、尻尾が上がってなかったからね。背骨でも折ったんじゃないかな」
ふーぅ・・・しかし、どうして私ばかり、サソリを踏んだり、死んだネズミを踏んだりするんだろう。広い家の中で、足を着地させる場所はたくさんあるというのに、私の歩く先になぜ、そんなものばかりがいるのか!!・・・と思っていたら、今朝は、台所でポールがゴキブリを踏みつけた。

「サソリのいるところにはゴキブリはいないので、サソリを殺す前に考えたほうがいい」とガイドブックには、書いてあったけど、うちには、サソリもゴキブリもいるではないか!ゴキブリは、不幸にも、ポールに踏まれて事故死した。

ゴキブリ騒動が収まると、今度は犬が庭にやってきた。
「はて?なぜ、犬が??」と思って庭へ出てみると、この間の牛飼いの少年が顔を出した。
「○□△???」突然、何かを言われたが、何のことだかわからない。
「えーっと。ノーコンプレンド(わからない)」と言ってみると、彼は花畑を指差して、
「アニマレス」とにっこり笑ったのだった。
アニマレス??アニマル?動物?ええ?・・・と、花畑のほうを見ると、なんと彼の牛たちが4頭、黙々と草を食んでいるではないか!
もう、この間、だめって言ったのに、何で、わかんないの!・・・と思いつつ、
「ディスクルーペ。ノー アニマレス。アキ ミ カサ。 ミ ハルディン」(ごめんね。動物はだめ。ここは、私の家。私の庭)と、つたないスペイン語で言ってみると、少年はものすごくがっかりした様子で牛の群れを庭の外へ出し、どこかへ移動して行った。
「この間と同じ男の子が、また牛に花を食べさせてたよ。ここは、だめだよって言ったら出て行ったけど」
ポールに言うと、「また?」とがっかりしている。前の花畑は家から見えるのでこうして守れるけれど、後ろの花畑は家から300メートルほど先にあり、とても目が届かない。
「彼、後ろの花畑へ行ったんじゃないよね?」
「どうだろう?そういえば、あっちのほうへ牛を連れて行ったような気もするけど。行ってみる?」
「行ってみよう」
靴を履き、後ろの花畑へと急いだ。すると、私たちが来たときには黄色の花が一面に咲いていたのに、驚いたことに、花畑の6割ぐらいが、地面から20センチぐらいのところで根こそぎ、刈り取られていたのだった。
「ひどいことするなあ」ポールは本当に悲しそうに言った。
よく見てみると、小川から花畑へ入ってこれるように、境界線のフェンスが切られていて、大きな木が1本、斧で切られていた。
「ここも、フェンスを直さないとね」
「残念だね」
「うん。でも、一日中、見張っているわけにもいかないしなあ」
とにかく敷地は、4万坪もあるのだ。前の花畑から後ろの花畑の端までだけでも、ざっと500メートルはある。
「彼らにとって、野の花は、牛の餌なんだよね。もう何百年もそうして生きてきたんだから、花が咲いたら収穫するのが当たり前なのは、よくわかる。でも、僕らがこの土地を借りている間は、できるだけ長く花を咲かせて、楽しみたかったね」
メキシコは、雨期が終わったばかりで、緑は豊かに生い茂り、野の花は満開。昆虫たちは、交尾に忙しい。蝶もトンボもコオロギも、雨期が終わって、冬が始まるまでの短い間に、生命を謳歌しようとしているようだ。
「雨が降るように祈ろう。今年の乾期は、例外的に雨がたくさん降って、刈り取られた花がもう一度、咲くように祈ろう」ポールが天に向かって言った。

雨が降るように祈ろう_d0107620_613021.jpg

# by lifewithmc | 2007-02-24 06:21 | メキシコ・山の暮らし
10月12日(木)曇り

昼からコレクティボでオアハカへ行く。コレクティボとは、乗り合いのタクシーで、村のお店の前に常に1,2台止まっている。どれもエトラ経由オアハカ行きらしい。とうことで、例によって歩いて30分かけて村まで行く。止まっているタクシーの後部座席に乗り込んで、待つこと10分、若い女性が一人、「ブエノスタルデス!」と言って後ろに乗ってくる。さらに、待つこと5分、男性が一人やってきて助手席に乗り、タクシーが発車した。
「なるほど、こうしてみんなで乗っていくのか。後ろに3人、前に1人、4人で満席ってことね」と思っていると、タクシーは途中で止まった。見ると、路肩に手を上げているおばあさんがいた。
「なんだろう?」
タクシーの運転手は車を降りてトランクを開け、おばあさんの荷物を入れている。
「ああ、おばあさんの荷物をどこかへ運んであげるのかな?」と思っていると、なんと、おばあさんは、「ブエノス・タルデス!」と陽気に言って、前の席に乗ってきたのだった。では、助手席に座っていた男性は?というと、彼は運転席と助手席の真ん中にちょこんと座っているのである。これには、驚いた。よく見ると、運転席と助手席の間には、一人辛うじて座れるようにクッションが敷いてあるのだった。

タクシーは、ぎゅうぎゅう詰めでオアハカへ向かった。前に3人座っているので、前方はほとんど見えない。タクシーは10分ほど走ってハイウェイへ出ると、ラジオをつけて陽気なメキシカンミュージックをがんがん流し、猛スピードで走り出した。フロントミラーには、マリア像のロザリオがぶら下がり、ぶんぶん、揺れている。
「そうか。こうしてみんな、ぎゅうぎゅう詰めになって移動するのか」
よく見ると、すれ違うバスも、みんなぎゅうぎゅう詰めだった。運転席と助手席の間にもう一人座るなんて、日本ではとても考えられないけれど、メキシコではそれが当たり前なんだ。そう思うと、なんだか、楽しくなってきた。

ハイウェイを30分から40分ほど走り、2時ごろ、オアハカに着いた。タクシーは、大きなマーケットのある賑やかな街角を右へ折れていく。すると、そこは両側に何十台も同じコレクティボが並んでいて、「エトラ」「サン・ホアン・デル・エスタド」など行き先の書いた看板がずらりと並び、渋滞した車の間をたくさんの人が行き交っていた。
「ここが、ターミナルなんだね。帰りはここから乗ればいいんだ」
確認してコレクティボを降り、ゾカロへ向かった。ゾカロへ向かう通りには、電気屋、楽器屋、金物屋、薬局、銀行、インターネットカフェなどが並んでいた。ちょうど、シティバンクのカードでお金が下ろせる銀行があったので、そこでお金をおろした。

ゾカロはあいかわらず、デモをしている人たちがテントを張って、座り込みをしていた。警察が介入した様子はなく、学園祭のような楽しげな雰囲気は変わっていなかった。広場に面したレストラン「Terranova」でランチを食べた。野菜スープ、エンチラーダ、メキシカンライス、桃のデザート、コーヒーで50ペソ(500円)。久しぶりの外食は、とても美味しかった。

コレクティボのターミナルへ戻る途中、インターネットカフェに寄って、メールのチェックをしたり、撮影した写真を30枚ぐらいブログにアップした。あっという間に6時になってしまい、急いでマーケットへ向かう。日が落ちたら、村の停留所から先、家まで3キロぐらいの道のりは街灯がないので、真っ暗になってしまう。急いで、スーパーでコーヒー、紅茶、缶詰、牛乳など保存できるものを買い込み、コレクティボに乗った。

ハイウエイを走っていくうちに日が沈み、村についたときには、もうあたりは薄暗かった。家に着くまでなんとか明るいままでいてくれるといいけれど・・・と思ったけれども、10分も歩くと真っ暗になった。上り坂になると、スーパーで買ってきた牛乳や缶詰を入れたリュックが、ずっしりと肩に食い込んでくる。息を切らしながら歩いていると、陽気な音楽をかけたトラックが後ろからやってきた。振り向くと、クリスマスの飾りのように色とりどりのランプをちりばめたトラックが坂を上ってくるところだった。
「ハッピートラックだ」思わず叫んだ。
すると、トラックは私たちを通り過ぎて止まった。
「乗ってく?」英語で運転手の男性が声をかけてくれた。
「イエス!」
運転席から降りてきた男性は、20代ぐらいだった。トラックの荷台はアルミのコンテナのようになっていて、後ろのドアは観音開きだ。彼はドアを開け、「乗って」というような仕草をした。まず、ポールが乗り、私も続いた。中は薄暗く、コンテナだと思ったけれども、屋根はなく、木の板を格子状に渡してあるだけで、なんと中には男の子がひとり寝転がっていた。
「オラ!」挨拶をして、中に座ると、運転手の男性はドアを閉めた。

ドアが閉まり、車が発車した。天井の格子の間から、車をかすめていく木の葉が見える。
「彼、どこで降ろしたいいか、わかってくれたかな」とポールが心配そうに言う。
「リオって言ってたから、大丈夫だよ。リオって川のことでしょ?」
「うん」
「川を渡る手前に分かれ道があるでしょ?きっと、このトラックは左側の道を登って山を越えていくんだと思う。右側の道は小川を越えて、私たちの家の前で行き止まりだもん」
そうは言ったものの、なんだか不安になってきた。本当に彼はわかってくれただろうか?
「カーブを曲がってる。きっと、貯水池のところだね」
「うん、坂を上がりきったら止まるはず」
ところが、トラックはなかなか止まらない。
「どうする?止まらないよ」
「運転手に話しかけられないしなあ」
コンテナは完全にアルミの箱になっていて、声をかけられる隙間などない。
「止まれ!止まれ!ここだ、止まれ!」
ポールが、念じ始めた。
すると、トラックは止まり、運転手が車を降りて、扉を開けてくれたのだった。
「よかった」 ほっとして車を降りる。そこから右へ折れて小川を渡れば、もう200メートルで我が家だった。
「ここで、いい? もっと先まで行く?」
「いやいや、ここで、OK、OK!ありがとう!」
お礼を言うと、ハッピートラックは、色とりどりの明かりをチカチカ点滅させ、陽気な音楽をかけながら、山を越えていったのだった。

「助かったね」
「ありがたいね。ほんと、メキシコの人はいい人だ」
私たちは再び荷物を担ぎ、真っ暗闇な道を歩き始めた。
「道の両側は岩がゴロゴロしてるから、真ん中を歩いて」とポールが先を歩きながら言う。
時々、小さな懐中電灯で前を照らしながら、彼の後ろを歩いていくと、
「明かりを消して!」とポールが叫んだ。
慌てて懐中電灯を消す。すると、目の前にふわりと小さな光の玉が現れた。小さな玉は緑がかった白い光を放ち、私の前や後ろや右や左をふわりふわりと踊るように飛んでいる。ふと、前を見ると、なんと私たちの行く先、ずっとどこまでも、幻想的な光の玉がふわりふわりと道の両側を飛び、足元を照らしてくれているのだった。
「うわー!蛍」
「道を照らしてくれてるよ」
道の両脇に何匹、飛んでいただろう。足元を見ながらゆっくり歩いていくと、何匹か、ずっと私の隣を飛んで、足元を照らしてくれていたのだった。
「ありがとう!ありがとう!」
手を伸ばせば届きそうなくらい近くに蛍が飛んでいる。
「ねえ、なんだか、妖精たちが光のランプを持って、私たちの道案内をしてくれているみたいだね」と言うと、
「うん。きっと、彼らは妖精なんだよ」とポールが言った。
# by lifewithmc | 2007-02-24 06:10 | メキシコ・山の暮らし

台所にサソリ!!

10月11日(水)快晴

昨日、一日かかって、やっとスピーカーを修理したポール。ブースターの回路をつないでいるワイヤーが切れていたのを発見し、「すごい!コンピューターの回路も直せるようになった!」と喜んだのも、つかの間、夜遅く、今度は、外付けのハードドライブが読み込めなくなった。「うわー!データが全部、消えている!!」とポールは、顔面蒼白。ハードドライブには、250GBもの写真、ビデオ、今までの彼の旅の記録が全部、保存されていて、これが唯一のバックアップデータなのだ。「これから書く本のための資料も全部、失ったか!と、二人ともショックでしばらく呆然としていた。しかし、私のパソコンにつなぐと、ハードドライブは復帰。結局、ポールのパソコンがうまくハードドライブを読み込めなかったらしく、再起動すると、元に戻ったのだった。

これを機に、今日は一日中、ハードドライブの中の写真やビデオの整理と、パソコンへのバックアップに追われた。写真やビデオは、「いつかゆっくり時間をとって整理しよう」と思いつつ、手をつけていなかったので、ちょうどいいチャンスだった。いらないデータを捨てて、メモリーの容量も少なくなり、まるで、身の回りの荷物を整理したみたいにすっきりした気分。
「原稿に取り掛かる前に、身辺整理をしたような気分だね。ちょうどよかった」と、一時は、心臓が止まるかと思った惨事も、プラスにとらえれば、ためになる!

しかし、惨事はなぜか続くものだ。二人ともくたくたになり、ポールは先に寝室へ上がって行き、台所を片付けて、私も寝よう、と思ったそのとき、台所のシンクの中に5センチくらいのサソリを発見した。
「うわあー!サソリ、サソリ!」 
慌てて叫んだ。
「ええ?」 ポールがやってきて、シンクを覗き込み、「ホントだ」とフリーズする。
「どうする?」
「どうしよう!」
「何かで掴んで外へ出そう」
「何かで掴んでって、言っても・・・・、あ、いいものがある!!」
私たちは、韓国でもらったステンレスの箸をずっと持ち歩いていた。ポールは箸を使うのが上手。サソリもつかめるに違いない。
「お箸でサソリを掴むなんて、日本の人には考えられないよね」と言いながら、ポールは、なんとか上手にサソリを掴み、バケツに移した。
「お箸でサソリを掴むどころか、家の中にサソリがいること事態、信じられないよ」怖いので、私はかなり離れて、彼の様子をうかがった。
「外へ逃がしてくる」
ポールは、バケツを持って外へ出て行った。
ほっ、一件落着だわ。とその瞬間、今度は、何か柔らかいものを踏んづけた気がして、足を上げた。
「うわーーーーーーーー!!!」
なんと、足の下には、小さなネズミが横たわっているではないか!
「ネズミ、ネズミ!ネズミが死んでるみたい!」
外へ飛び出していって、ポールに訴える。
「何?今度はネズミ?どこ?」
台所へ入ってきたポールはじーっとネズミの様子を伺い、「死んでる」と言って、長い尻尾をつかみ、外へ出て行った。やっぱり、私が踏みつける前に死んでいたらしい。
「サソリにやられたのかね」
「そうかもね。赤ん坊だったもんね」
彼が台所へ戻ってきた。
「しかし、何だって、今日はこんなにいろいろなことがあるのかね」
そう言って、やっと台所の電気を消そうとしたときに、今度は、彼がもう一匹、サソリを発見したのだった。
「うわ!」
ちょうど足を踏み出そうとしたところに、さっきのより小さいサソリがいたのだ。
「なんだって、また!」もう一度、ステンレスのお箸でサソリを掴み、バケツに入れて、外へ出した。
「戻って来るなよ!」と、ポールはサソリに話しかけている。
「君たちは、家賃、払ってないんだからね!」

台所にサソリ!!_d0107620_665425.jpg

# by lifewithmc | 2007-02-24 06:05 | メキシコ・山の暮らし