エッセイスト菊池木乃実のブログです。環境活動家の夫、ポール・コールマンと共に南米チリのパタゴニア地方に在住。ホリスティックで持続可能なライフスタイル実践中


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中国で最初の木を植えました

先週の月曜日、私たちは阿婆角(Yabochau)という海辺の小さな町を目指して歩いていました。

その日は、町を抜けるのに時間がかかり、舗装されていない土埃が激しい道をひたすら歩きました。地図で見るとそれほど距離はないようだったのですが、実際には、道が大きく迂回していてかなりの距離。ようやく、日が暮れた頃、海辺にたどり着きました。小さな湾の向こう側に、ちらほらと灯りが見えます。どうか、レストランがありますようにと祈りながら、灯りを目指して歩いて行くと、外灯もない、暗い町に着きました。小さな灯りは、道沿いにある家から漏れていたようです。通りにいる人に、「旅館はありますか?」と聞くと、「ある」との答え。でも、指差してもらった方を見ても、灯りが見えません。はて、本当に旅館があるのか?と疑ったまま、海沿いの道を歩いていくと、小さな食堂がありました。

「とりあえず、お腹をいっぱいにして、それから旅館を探そう」と食堂に入ると、2つのテーブルの周りに大勢の若者が座って、食事をしていました。みんな、ものすごく興味深々で私たちを見ています。バックパックを下ろし、テーブルに座り、ビールを注文し、「メニューはありますか?」と聞くと、食堂のオーナーらしきお父さんに台所に案内されました。そこには、水槽が並んでいて新鮮な魚や貝、海老、蟹などが入っていました。どうやら、地元の人は水槽から好きな魚介類を選んで、料理してもらうようです。でも、私にはそんな複雑なことはできません。そこで、食堂に戻り、ポールを呼んで若者たちのテーブルに並んでいる料理を見て、食べたいものを指差すようにと言いました。ポールは、なんだかわからないけど、野菜らしきものを頼もうと、若者のテーブルに並んでいるものを2つ指差し、お父さんは満足して台所へ消えて行きました。

料理がやってくると、若者が一人、二人とテーブルにやってきて、ポールのコップにビールを注ぎ始め、「乾杯!」とグラスを上げました。同時に、20人ぐらいの若者が、「乾杯!」とグラスを空け、みんなニコニコ笑っています。気がつくと、10人ぐらいテーブルを取り囲み、食堂のお母さんも子供たちもやってきて、私にいろいろ話しかけてきました。もちろん、なんだか、さっぱりわからないので、ノートを出し、「ごめんなさい。中国語は話せません。日本人です。ここに書いてください」とお願いすると、「どこから来たのか、どこへ行くのか、どうしてこの町にいるのか?」と聞かれました。イギリス人と日本人のカップルがバックパックを背負って歩いているのは、本当に不思議な光景のだと思います。

そこで、去年、中国を歩いたときの新聞記事を取り出して、みんなに見せると、2分もたたないうちに、一人の若者が、「明日、ここで木を植えてくれますか?」と言ったのです。「もちろんです!」と私たちは即答。すると、もう一人の男の人が、「この阿婆角湾は、1937年第二次世界大戦中に日本軍が上陸した場所です。だから、平和のために木を植えたいのです」と言いました。なんという偶然(必然?)なのでしょう。私たちは、この小さな、小さな海辺の町に導かれて来たことに不思議な縁を感じました。その後、彼らは、私たちの食事代を払ってくれ、ホテルに案内してくれて、「私たちがホテル代を払うので心配しないで」と言い、「明日、ここで待ち合わせしましょう」と言って、去っていきました。

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翌日は、とても珍しく晴れて、空気が澄んでいて、空は青く、海もとてもきれいでした。この場所は、まだ公害で汚されていない、数少ない場所のようです。ビーチは真っ白で、海はエメラルドグリーンとブルー。「ここは、今まで行ったビーチの中でも最も美しい場所の一つ」とポールも感動していました。私たちが木を植えたのは、その美しいビーチを見下ろす丘の上です。彼らは建設業者で、20年前に中止になった道路が今年、再び建設されることになったので、道路を作っているのでした。

「ここは自然の美しい場所です。ここにただ座っているだけで気持ちが落ち着きます。この美しい自然を守りたいのです」「私たちは、あなたたちの活動を尊敬し、支持します」と言ってくれました。

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木を植えた後は、みんなでお昼を食べに行きました。美しい海の見渡せる食堂で、採りたての新鮮なシーフードをご馳走になり、お腹も満腹、心は幸福な気持ちでいっぱいになり、惜しみながらも別れを告げ、次の町へ出発しました。

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実は、この町へ向かって歩いている時、「ポールは、これまで地元の人と木が植えられることをひたすら信じて、何年もこうして知らない国、知らない町を歩いて、きたんだなあ。今回は、あとどれくらい歩いたら、中国の人と木を植えられるのかなあ」と考えていたところでした。それから、3時間後には、地元の人と木を植えることになっていたのですから、本当に歩く旅は素晴らしいです。

彼らのお給料は、そんなに多くはないはずです。でも、私たちの食事代や宿泊代を払ってくれ、私たちを応援してくれたことに、本当に本当に感謝し、謙虚な気持ちになりました。

「この活動の報酬はなんですか?」とポールはよく聞かれます。この活動は、私たちの雇い主(?)である地球さんからお給料をもらえるわけではありませんから、動機が何なのか、理解されにくいのです。

ある男の子(中国のホテルのスタッフ)には、「中国ではお金が一番大事なんです。歩くのは、時間の無駄だって言われています」と言われました。「その通り、お金はとても大事です。でも、私たちが地球に住めなくなったら、お金も稼げません。地球がなければ、私たちの命もないし、お金もないのです。私たちは、中国の人たちは環境をきれいにできると信じているし、助けたいと思っています」と言うと、深く頷き、「中国の環境は汚いです。きれいにしないといけないんです。助けてくれてありがとう。僕も僕たち中国人は環境をきれいにできると信じたいです」と言ってくれました。

こうした普通の人たちとの温かい交流があるたびに、私たちはとても幸せな気持ちになります。こうした人々との交流があるおかげで、私たちは歩き続けて行けるのです。毎日、15キロ、20キロ、と歩き続けて行くのは、身体がきつい時もあります。毎日、膝の裏や足首やアキレス腱や背中や方や、どこかは必ず痛いです。今回は、ラップトップをバックパックに入れて歩いているので、バックパックも重いです。

「こんなにきつい思いをして歩いているのは、何のためなんだろう?」と思うこともあります。でも、私たちが歩いていることで、この地球にもう一本、木が植えられたり、人々の美しい心に触れたり、「お金が一番大事で歩くのは時間の無駄」と教えられてきた男の子の心に変化が起きたりするのなら、それだけできっと意味があるのだろうと思います。それは、とても小さなことかもしれないけれど、小さな波はきっと大きな波になるはずです。それを信じて、歩いていきます。

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by lifewithmc | 2007-10-15 22:38 | 中国・徒歩の旅