人気ブログランキング |

エッセイスト菊池木乃実のブログです。環境活動家の夫、ポール・コールマンと共に南米チリのパタゴニア地方に在住。ホリスティックで持続可能なライフスタイル実践中


by lifewithmc
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

牛を追う

12月10日(日) 晴れ

日の出前に起きる。コーヒーを淹れ、(淹れてくれるのはポール)、テラスで鳥を待つ。「ん?」ふと見ると、家の前の野原で、何かが動いている。「ん?何か、今、とても見たくないものを見た気がする」とポールが言う。「牛だ」「牛だね」野原に牛がいる。大きな母牛と小さな子牛。なぜだか、2頭きり。のんびりと、草を食んでいるではないか!
「行ってみよう」
ポールは2メートルほどある棒を持っていく。この棒は、暖炉で薪を燃やしているときに、蒔の位置を変えたりするのに使っているのだけれど、ちょうど、「ロード・オブ・ザ・リング」で魔法使いのガンダルフが使っている杖のように見える。

近づいてみると、牛たちは私たちをじっと見て、「なによ、あんたたち」という顔をしている。近くに牛飼いの姿はない。2頭だけ、ここに迷い込んだんだろうか。とにかく、すでに花は枯れてしまったとはいえ、花が枯れたあとには、種ができ、秋から冬にかけての植物も生えてきている。それを牛に食べられてしまうと、禿山のようになってしまい、あとには、なかなか植物が生えない。
牛たちは、斜面の中ほどに陣取って草を食んでいる。私たちは下からそっと上がって行く。
「Vaminos!」(出て行きなさい!)と棒を振り、下から叫んでみるが、何の効果もない。
はて・・・

「どうする?」とポールが私を見る。
「どうするって、わかんないよ。牛を追ったことないもん」
「それは、僕も同じだよ」
ポールは彼らの少し下から、牛たちを見上げるような格好で杖を左右に振り、なんとか、彼らを動かそうとする。しかし、母牛も子牛も、私たちの存在を無視するばかり。一歩たりとも動かない。しばらく杖を振り回していると、母牛が大きな角をこちらへ向けて、私たちを威嚇し始めた。魔法の杖も効果がない。

すると、「わかった!」と突然、ポールが言い、斜面を登り始めた。どんどん登って、牛たちを上から見下ろす。
そして、もう一度、今度は上から、「Vaminos!」(出て行きなさい!)と棒を振ってみた。すると、母牛は草を食べるのをやめて斜面を下り始め、子牛も慌てて後を追った。2頭の牛が庭から出て行くのに、ほんの2分もかからなかった。

「上から行くのがコツだね」とポール。
「なるほど。これで、私たち、牛の追い方もわかったね」
しかし、それが何かの役に立つのかしらん?
by lifewithmc | 2007-04-16 08:31 | メキシコ・山の暮らし