エッセイスト菊池木乃実のブログです。環境活動家の夫、ポール・コールマンと共に南米チリのパタゴニア地方に在住。ホリスティックで持続可能なライフスタイル実践中


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巡る、巡る。恩返しは、巡る

12月2日(土)曇り

昨日の朝、ピエールがやってきた。ピエールは、500メートルほど先に住んでいるお隣さん。1ヶ月半ほど、サン・ミゲルという町に出張していて、一昨日、戻ってきたらしい。サン・ミゲルでは、「持続可能なエネルギー開発」と「水耕栽培」をテーマにした会議があり、その同時通訳をしていたのだ。サン・ミゲルには、ピエールの実家があり、お母さんが住んでいる。そこに泊まっていたのだが、ピエールがいた1ヵ月半の間に、お母さんに癌が見つかり、手術をし、その後、感染症にかかって、先週の日曜日、あっという間にお母さんは亡くなってしまったのだった。

「最後の日、一日中、母と一緒にいたんだ。本を読んであげたり、いろいろな話をした。夜中に興奮して起きて落ち着かないので、僕が睡眠薬を渡すと、にこりと笑ってそれを飲んで眠ったんだけど、それが最期だったんだ」そう言うと、ピエールは大きな溜め息をついた。

「お葬式はしてきたの?」ポールが尋ねると、
「いや、母は今の旦那さんとホームレスの人たちに無料で食事を提供するキッチンを何軒もやっていてね、地域の人たちにとても親しまれていたんだ。だから、16日に大きなお葬式をすることにした。かなり、たくさん人が集まると思うよ」とピエールは言い、「ところで、今日の夕方、僕の家に来ない?」と続けたのだった。
「もちろん」ポールはそう言い、同意を求めるように私を見た。
「もちろん」

ピエールは、少し元気になり、「ありがとう。じゃあ、また、あとで」と言って、去っていった。
彼の後姿を見送りながら、「誰かに話したかったんだろうね」とポールがつぶやいた。
「そうね。いろんな感情が渦巻いているでしょうしね」

夕方、ピエールの家へ行った。再婚したばかりのピエールの奥さんのリンダに会い、居心地のいいリビングルームで飲み物を飲みながら、ピエールの生い立ちやお母さんのこと、リンダとのなれ初めなど、取り留めのない話をした。ピエールの家はソーラー発電だけで電気をまかなっているので、リビングルームにあるライトはひとつだけで、あとは、部屋中にたくさんのキャンドルが灯してあった。キャンドルの明かりは、優しくて、暖かくて、心地よかった。

話を聞いてあげるというのは、大切なことだ。誰かが、傷ついたり、悲しんだりしているとき、何も言わず、ただ、話を聞いてあげるということは、アドバイスをしたり、元気にしてあげようとしたりすることより、ずっと大切なことだと思う。私の前の旦那さんは2年前に急死したのだけれど、そのとき、ただ、ただ、何も言わず、私の話を聞いてくれる友人たちに、どれほど助けられたことか。あのときの恩は、こうして返していけばいいんだ。ああ、巡る、巡る。恩返しは、巡る。
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by lifewithmc | 2007-04-14 06:02 | メキシコ・山の暮らし