エッセイスト菊池木乃実のブログです。環境活動家の夫、ポール・コールマンと共に南米チリのパタゴニア地方に在住。ホリスティックで持続可能なライフスタイル実践中


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12月29日(金) 晴れ 

川沿いでチェーンソーの音。急いで行くと、太った男の人が生きている木の枝を切り落としていた。村の条例で「枯れた木以外は切り倒してはいえない」ことになっている。「この木は切ってはだめだ。川沿いにある木は、川に水をもたらす大切な木なんだから、切ったらいずれ、川の水もなくなるんだよ」とポールが言うと、「乾いているから、いいんだ」と理不尽な言い訳をする。「死んでないじゃない!」と私が言うと、「いや、死んでいる」と自信たっぷりである。でも、木を見上げると、まだ、緑の葉がついている。「役所に報告する」とポールが言って、私たちがいなくなると、男の人は切り倒した枝を急いでロバに載せ、こそこそと逃げていったようだった。

違法なことをしているのは、わかっているのだろう。生きている木が切られていたら、見過ごさない。特に、川沿いの木は水をもたらす大切な木。川の上流では大々的に違法伐採が行われていて、川の水量は年々減っているという。この川は、村の唯一の水源。村の農家も酪農家も、みな、この川の水のおかげで生きている。ほんの一握りの心無い人たち、利己主義な人たちのせいで、将来、川の水が枯れたら、みな、困るだろうに。

私たちが来てから、川沿いの茂みを牛たちが荒らさないように、誰も木を切ったりしないように、と注意していたので、今では、そこは、ジャングルのようになり、鳥たちのパラダイスになっている。緑が生い茂っているので地面が乾燥しにくく、地中に根が張り巡らされているので、雨が降ったときの保水率も高い。
「川沿いの地域を公園にして、川沿いの茂みと木々と鳥たちの住処を守れないだろか」とポールが考え始める。川沿いの小道にいくつかベンチを置き、村の人が散歩に来る公園にすれば、こっそり木を切りにくる人もいなくなるだろう。

夜、ネズミが巣から出てくる時間に、ポールが手作りで作ったペットボトルに穴をあけただけの罠をしかけた。ペットボトルは5リットル用のものを2つ。1つのペットボトルの横に、ネズミが入る大きさの穴を開ける。もうひとつのペットボトルには、シラントロを入れておく(シラントロ好きなことは確認済み)。シラントロを入れたボトルの横に穴を開け、、もうひとつのペットボトルの口を差し込む。ネズミの穴に、ペットボトルをしかけ、ネズミが穴から出てきてペットボトルに入り、シラントロの匂いを嗅いで、もうひとつのペットボトルへ移動したら、穴をふさぎ、ネズミを生け捕りするという計画だった。

さて、ペットボトルをしかけ、じっと見守っていると5分もしないうちに、ネズミが穴から出てきてペットボトルの中に入った。しかし、次のペットボトルへは移動せず、最初のペットボトルの中でどこか出口はないかと探し始めた。穴の中へ戻るつもりは、まったくないらしく、ペットボトルの穴の端を齧り始める。ポールがそっとネズミに近づくと、ネズミはペットボトルを齧るのをぴたりとやめて、耳を澄ませた。しかし、ポールが気配を消してじっとしていると、ネズミはまた、ペットボトルを齧り始める。そこで、ポールがすり足でネズミに近づく。ネズミがぴたりと止まる。ポールも止まる。ネズミが動く、ポールも動く。まるで、「だるまさんが転んだ」をやっているかのように(ポールによれば、ネズミに気づかれずににじりよることができるのは、カンフーの技だという)、ポールはじりじりと、かなり長い時間をかけて、ペットボトルに近づき、ついに、ペットボトルを床の上にスライドさせて、ネズミを確保した。その間、息を呑んで見つめていたが、ネズミに気づかれずに、至近距離まで近づけるとは、驚いた。

ネズミを確保した後は、穴をふさいで、代わりに空気穴を何箇所かあけ、水とシラントロを入れた。ネズミは、のどが渇いていたらしく、水をなめ、そのあと、シラントロを少し齧り、出口を探して、ペットボトルを齧り始めた。明日の朝、ネズミを逃がそうと、ペットボトルに入れたまま、テラスへ出す。寒さで死んでしまわないようにと、ポールがバスタオルでペットボトルをくるんだ。
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by lifewithmc | 2007-05-02 08:27 | メキシコ・山の暮らし