エッセイスト菊池木乃実のブログです。環境活動家の夫、ポール・コールマンと共に南米チリのパタゴニア地方に在住。ホリスティックで持続可能なライフスタイル実践中


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花粉まみれのミツバチの死と復活

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12月8日(金) 晴れ
 
朝、テラスでコーヒーを飲んでいると、床の上にミツバチらしきものが落ちていた。ポールが足の裏を刺されてからというもの、毎日のように床にミツバチが落ちてくる。気温が低くなったので、そろそろみな死んでいく時期なのか、それとも、花粉まみれになって息ができなくなるのか、花粉で重くなるのか、はたまた花粉に酔うのだろうか。よく見ていると、突然、ぽろんと、木の枝から床に落ち、仰向けになって動かなくなる。このミツバチも近づいてみると、ひっくり返ってじっとしている。身体は花粉まみれで、まっ黄色だ。「死んでいるのか?」と思ったが、よく見ていると、クチバシ(?)(蜜を吸うストローのような口)がかすかに上下している。息をしているようだ。

「死ぬのかな?」「さあ、でも最近、ぽろぽろミツバチが落ちてくるから、死ぬ時期なのかもしれないね。だとしたら、何もしてあげられないよね」とポール。すると、ミツバチの周りにハエが2匹降りてきた。ハエたちは、ミツバチの周りを遠巻きに巡回し、時々、近づいてきてなにやらチェックしている。ミツバチの死期を感じているのか、死んだらすぐにミツバチにたかろうとしているのか。すると、ミツバチは足をバタバタ、か弱いながらも動かし始めた。
「起き上がりたいのかも?」細長い枝を見つけてきて、そっとミツバチを転がしてみる。うつ伏せになった。でも、動く様子はない。

「うつ伏せになったら、息がしにくいんじゃないの?あんまり、様子がよくないよ」とポールが言う。なるほど、そうなのか。もう一度、枝でそっとミツバチをつついて、また、仰向けにした。そのとき、ミツバチが両脚で枝をつかんだ。
「つかまりたいの?」もちろん、聞いてみても返事はない。が、そのままにしていると、ミツバチは両脚でしっかり枝にしがみついた。

「何かに、しがみつきたいみたいよ」そっと枝を持ち上げると、今度は4本の脚でしがみつく。もしかしたら、垂直になりたいのか、と思い、そばにある植木鉢の上にそっと枝を差して、垂直にしてみた。すると、ミツバチはなにやら、ほっとした様子で、枝にしがみついたまま、大きく息をし始めた。頭から脚の先まで、まっ黄色に花粉まみれになったミツバチは、よく見ると、顔中が眼というくらい眼が大きく、しかも、透き通ったエメラルドグリーンをしていた。

「ねえ、見て、珍しい眼の色だよ」
「ほんとだ。死んでいくときの眼の色なのかな。ものすごくきれいだね」
ポールがアップで写真を撮り始めた。
花粉まみれで枝にしがみついているミツバチは、テディベアのように見える。
「このまま死んでいくんだとしても、ここなら、ハエが来ないから大丈夫だね」

ミツバチは枝にしがみついたまま、長いストローを上下に大きく動かして、深呼吸を何度も繰り返した。どれくらい、そうしていただろう。多分、10分か15分、もっと長かったかもしれない。最初、ミツバチはお尻をヒクヒクと前後に動かし始めた。それから、どんどん動きが速くなり、枝にしがみついたまま、かなり激しくお尻を前後に振り始めた。
「あ、飛ぶ!」ポールがそう言ったときだった。ミツバチは、ぽとんと土の上に落ち、あっという間に飛び立っていったのだった。

「ああやって、お尻をヒクヒク動かすのは、たいてい、飛ぶ準備をしているとなんだよね。そろそろ、飛ぶな、と思ったけど、思ったより早かったなあ」ミツバチが飛びたつ瞬間を写真に撮り損ねた彼は、とても残念そうだった。
「生きてたんだね」
「うん、なんだったんだろうね。花粉を吸いすぎて窒息しそうだったのかな?」

なぜ、ミツバチは突然、床の上に落ちてきて動かなくなり、しばらくすると、正気に戻って飛び立つのか。花粉に酔うのか、欲張りに花粉を集めすぎて重くなるのか、窒息しそうになるのだろうか。

ともかく、ミツバチの死を見届けるつもりだった私たちは、奇しくも、ミツバチの気絶(?)と復活を目撃したのだった。
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by lifewithmc | 2007-04-16 08:25 | メキシコ・山の暮らし