ネズミがいる!
2007年 02月 24日
10月9日(月)晴れ
朝、ポールがネズミを発見した。リビングの壁にかかっている大きなタペストリーを噛み切って穴を開けているところを見つけ、下からタペストリーの裾を掴んで、上下に大きく振ると、ぴょーんとネズミが飛んで床に着地し、そのまま、台所のほうへ走って逃げたらしい。
「ものすごい大きなネズミだった。マウス(ハツカネズミ)じゃなくて、ラット(ドブネズミ)かもしれない。それとも妊娠してるのかな。妊娠してたら大変だ。どんどん、ネズミが増えるよ!」とポールは興奮している。
「どこから来たんだろう。台所へ逃げたから、排水溝の下から来たのかな」
排水溝の下には少し隙間が開いている。その下に巣があるのかもしれない。ネズミを殺したくはないので、台所へ出てこないように、排水溝の隙間の周りに漂白剤をまいてみた。そそれと、タペストリーの下にも漂白剤をまくことにする。漂白剤の匂いは強烈だし、私たちにとっても有害なので、あまり匂いをかぎたくはないけれど、このまま、ネズミにタペストリーに穴をあけ続けさせるわけにもいかないし、今のところ、それしか方法がなさそうだった。
タペストリーには、15センチX 20センチくらいの長方形の穴と、その半分くらいの穴が開いてしまった。タペストリーの下には、ネズミが食いちぎった糸くずが山盛りになっていた。
「どうして、タペストリーを食いちぎっていたのかな?」
「巣を作っているのかもよ。巣作りのための材料じゃないの?」
「そうかもしれない。きっと、冬支度をしてるんだ」
いろいろと推測をしてみるが、とにかく、家中、ネズミの糞だらけだったところを見ると、かなり長いこと、この家の中に住んでいたようだ。二階の本棚の奥には、トウモロコシや豆などがちらばっていたし、タンスの引き出しの中には、脱脂綿を丸めて玉にしたものがあり、真ん中には、ちょうどネズミが入るくらいのクボミが開いていた。私がそれらをきれいに掃除してしまったので、ネズミは食料とベットを失い、「他に巣を作ろう!」とカーペットを食いちぎり始めたのかもしれない。ともかく、二度と戻ってこないことを祈った。
コーヒーを入れ、全粒粉のパンに、昨日の残りのサラダを挟んでサンドイッチにし、チーズ、オリーブを添えて、テラスで朝ごはんにする。今日も晴れていて気持ちがいい。蝶や鳥が飛んでいく。
朝ごはんのあと、庭を歩く。コオロギ、トンボ、蝶、カミキリムシ、アリなど、いろんな虫に出会う。冷たい風が谷を流れていく。夫は夢中で写真を撮る。敷地の端から端まで往復すると、汗ばんできた。
「もう少し先へ行ってみようか」
敷地の南側の端から、小川に沿って通っている道へ出る。緑の葉が生い茂って、トンネルのようになっている。そこを過ぎると、川幅が広くなり、小さなダムのようになっている。ダムの手前は、ちょうど人が一人、寝そべって入れるくらいのくぼみがあり、そこを清流が流れていた。
「うーん、かなり誘惑されるな」 ポールの額からは汗が流れている。
「入ったら?」
「よし!行水だ!」
あっという間にパンツだけになって、ポールは川へ入っていった。
「うわー!冷たい!でも、気持ちいい!」首まで水につかって叫んでいる。
「一気に身体が清められる気がするよ。これなら、お風呂いらないね」
歩いているときには、滝や泉、小川や海が私たちのお風呂だった。もちろん、冬はそうはいかないけれど、ポールはとにかく、「水を見たら泳ぎたくなる」人なので、突然の行水には慣れている。8月にイギリスを歩いているときも、誰も見ている人もいなかったので、パンツ一丁で川に入って泳いでいたし、9月にバヤドリッドへ行ったときも、セノーテと呼ばれる天然の洞窟泉を見に行き、そこで泳いでもいいとわかるやいなや、泉に入って泳いでいた。
「いやー!!気持ちいい!これはいい!さっぱりした!」
彼はひとしきり泳ぐと気が済んで、河原へ上がり、濡れたままTシャツを着て、ズボンをはいた。このまま、しばらくすれば、乾いてしまうだろう。とにかく、行水にちょうどいい場所が見つかって、すこぶる嬉しそうだった。
花畑を通って、家へ戻る。花畑は、白、赤、黄色、紫の様々な色の花が咲いている。その上を、オレンジに茶色の縞模様、黒に黄色の縞模様などの蝶や、大小、様々な蜜蜂が飛んでいく。空を見上げると、小さな鳥がキューキューと鳴きながら飛んでいく。そのはるか上には、ノスリが大きな羽を広げて、悠々と飛行している。この美しい風景を、胸いっぱいに吸い込んで、色とりどりの花や蝶で、身体をいっぱいにしたい気持ちになる。吸い込んで、吸い込んで、吸い込んで、周りのもの、すべてを吸い込んで、美しいものでからだをいっぱいにして、まわりに溶けてしまいたい気持ちになる。
夕方、村まで歩いてメールを送りに行く。金曜日にメールをチェックしたとき、韓国の出版社から契約書が届いていたので、内容を確認してサインをして、送り返したのだ。でも、それだけのために、30分かかった。4月に韓国を歩いて木を植える旅をしたことがきっかけで、来年、韓国でもポールの本が出版されることになったのだ。
このことは、私たちにとっても、嬉しい驚きだった。メキシコに半年、住みたい、とポールが言い出したのは、本の出版の決まるずっと前のことで、正式に「本を出しましょう。ついては、原稿を年内に仕上げていただきたいのですが」というメールが来たのが、メキシコに来るちょうど2日前だった。「メキシコに住む本当の理由は、あとからわかるんだろうとは思っていたけれど、これだったんだね」と、二人で納得したのだった。
さて、村から帰ってきて、夕食にした。夕食は、レタス、ピーマン、ニンジン、タマネギ、キュウリ、トマト、アボガド、オリーブのサラダ。ドレッシングは、オリーブオイル、海の塩、庭から取ってきたライム。それに、全粒粉のパン。
夜は、「ヨギの哲学」を読んだ。
朝、ポールがネズミを発見した。リビングの壁にかかっている大きなタペストリーを噛み切って穴を開けているところを見つけ、下からタペストリーの裾を掴んで、上下に大きく振ると、ぴょーんとネズミが飛んで床に着地し、そのまま、台所のほうへ走って逃げたらしい。
「ものすごい大きなネズミだった。マウス(ハツカネズミ)じゃなくて、ラット(ドブネズミ)かもしれない。それとも妊娠してるのかな。妊娠してたら大変だ。どんどん、ネズミが増えるよ!」とポールは興奮している。
「どこから来たんだろう。台所へ逃げたから、排水溝の下から来たのかな」
排水溝の下には少し隙間が開いている。その下に巣があるのかもしれない。ネズミを殺したくはないので、台所へ出てこないように、排水溝の隙間の周りに漂白剤をまいてみた。そそれと、タペストリーの下にも漂白剤をまくことにする。漂白剤の匂いは強烈だし、私たちにとっても有害なので、あまり匂いをかぎたくはないけれど、このまま、ネズミにタペストリーに穴をあけ続けさせるわけにもいかないし、今のところ、それしか方法がなさそうだった。
タペストリーには、15センチX 20センチくらいの長方形の穴と、その半分くらいの穴が開いてしまった。タペストリーの下には、ネズミが食いちぎった糸くずが山盛りになっていた。
「どうして、タペストリーを食いちぎっていたのかな?」
「巣を作っているのかもよ。巣作りのための材料じゃないの?」
「そうかもしれない。きっと、冬支度をしてるんだ」
いろいろと推測をしてみるが、とにかく、家中、ネズミの糞だらけだったところを見ると、かなり長いこと、この家の中に住んでいたようだ。二階の本棚の奥には、トウモロコシや豆などがちらばっていたし、タンスの引き出しの中には、脱脂綿を丸めて玉にしたものがあり、真ん中には、ちょうどネズミが入るくらいのクボミが開いていた。私がそれらをきれいに掃除してしまったので、ネズミは食料とベットを失い、「他に巣を作ろう!」とカーペットを食いちぎり始めたのかもしれない。ともかく、二度と戻ってこないことを祈った。
コーヒーを入れ、全粒粉のパンに、昨日の残りのサラダを挟んでサンドイッチにし、チーズ、オリーブを添えて、テラスで朝ごはんにする。今日も晴れていて気持ちがいい。蝶や鳥が飛んでいく。
朝ごはんのあと、庭を歩く。コオロギ、トンボ、蝶、カミキリムシ、アリなど、いろんな虫に出会う。冷たい風が谷を流れていく。夫は夢中で写真を撮る。敷地の端から端まで往復すると、汗ばんできた。
「もう少し先へ行ってみようか」
敷地の南側の端から、小川に沿って通っている道へ出る。緑の葉が生い茂って、トンネルのようになっている。そこを過ぎると、川幅が広くなり、小さなダムのようになっている。ダムの手前は、ちょうど人が一人、寝そべって入れるくらいのくぼみがあり、そこを清流が流れていた。
「うーん、かなり誘惑されるな」 ポールの額からは汗が流れている。
「入ったら?」
「よし!行水だ!」
あっという間にパンツだけになって、ポールは川へ入っていった。
「うわー!冷たい!でも、気持ちいい!」首まで水につかって叫んでいる。
「一気に身体が清められる気がするよ。これなら、お風呂いらないね」
歩いているときには、滝や泉、小川や海が私たちのお風呂だった。もちろん、冬はそうはいかないけれど、ポールはとにかく、「水を見たら泳ぎたくなる」人なので、突然の行水には慣れている。8月にイギリスを歩いているときも、誰も見ている人もいなかったので、パンツ一丁で川に入って泳いでいたし、9月にバヤドリッドへ行ったときも、セノーテと呼ばれる天然の洞窟泉を見に行き、そこで泳いでもいいとわかるやいなや、泉に入って泳いでいた。
「いやー!!気持ちいい!これはいい!さっぱりした!」
彼はひとしきり泳ぐと気が済んで、河原へ上がり、濡れたままTシャツを着て、ズボンをはいた。このまま、しばらくすれば、乾いてしまうだろう。とにかく、行水にちょうどいい場所が見つかって、すこぶる嬉しそうだった。
花畑を通って、家へ戻る。花畑は、白、赤、黄色、紫の様々な色の花が咲いている。その上を、オレンジに茶色の縞模様、黒に黄色の縞模様などの蝶や、大小、様々な蜜蜂が飛んでいく。空を見上げると、小さな鳥がキューキューと鳴きながら飛んでいく。そのはるか上には、ノスリが大きな羽を広げて、悠々と飛行している。この美しい風景を、胸いっぱいに吸い込んで、色とりどりの花や蝶で、身体をいっぱいにしたい気持ちになる。吸い込んで、吸い込んで、吸い込んで、周りのもの、すべてを吸い込んで、美しいものでからだをいっぱいにして、まわりに溶けてしまいたい気持ちになる。
夕方、村まで歩いてメールを送りに行く。金曜日にメールをチェックしたとき、韓国の出版社から契約書が届いていたので、内容を確認してサインをして、送り返したのだ。でも、それだけのために、30分かかった。4月に韓国を歩いて木を植える旅をしたことがきっかけで、来年、韓国でもポールの本が出版されることになったのだ。
このことは、私たちにとっても、嬉しい驚きだった。メキシコに半年、住みたい、とポールが言い出したのは、本の出版の決まるずっと前のことで、正式に「本を出しましょう。ついては、原稿を年内に仕上げていただきたいのですが」というメールが来たのが、メキシコに来るちょうど2日前だった。「メキシコに住む本当の理由は、あとからわかるんだろうとは思っていたけれど、これだったんだね」と、二人で納得したのだった。
さて、村から帰ってきて、夕食にした。夕食は、レタス、ピーマン、ニンジン、タマネギ、キュウリ、トマト、アボガド、オリーブのサラダ。ドレッシングは、オリーブオイル、海の塩、庭から取ってきたライム。それに、全粒粉のパン。
夜は、「ヨギの哲学」を読んだ。
by lifewithmc
| 2007-02-24 05:57
| メキシコ・山の暮らし